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(*゚∀゚)ザッカン!

ブーン系小説、雑記、感想ブログ

川д川は豆を食べるようです  前編

例えば、生徒がまるで落書き帳のように使っている「学校」があったとしよう。
壊れていない便器など存在しない。数学の授業ではバスケットボールが始まる。
絆だとか、仲間だとかそんな薄っぺらい単語を並べ、孤独を紛らわす屑の集まり。

もちろん私のように屑でない人間もいる。しかし、それはほんの一握り。
そんな人間は、集団意識を高めるためだけに仲間外れ。ハブられる。
蹴られた顔面の傷は、奴らの言う絆とは比べものにならないほど深い。

そんな日常の途中で、私は素晴らしく特殊な物を手に入れた。

大切に育てていた植物の実、から。



川д川は豆を食べるようです





从 ゚∀从「優等生ぶってんじゃねーよ!」

川д川「痛っ………!」

顔面に蹴りを入れられた。これで41回目。中学時代の記録を越えた。
へらへらと笑いながら去っていく私とは違う低俗な人間。ヘドが出る。

川д川「………………」

女子トイレの個室から出て、昨日バイトで稼いだばかりの金が盗られた財布をカバンにしまい
ひっそりと学校を出て、一人で家に帰った。
例え、どんなに遠回りになろうとも、下劣な笑い声が聞こえる場所を避けて家に帰った。

川д川「ただいま」

「」

習慣とは怖いもので、母親の怒号などは既に耳へ届かなくなっていた。
しきりに口を動かす母親を無視し、部屋へ戻った。

そして訪れる至福の時。快楽。快楽。
植物に水をあげた、私が大事に育てている真っ白な植物に。

近くの原子力発電所の近くで拾った小さく真っ白な豆。
まるで拾って下さいと言わんばかりの、可愛らしい丸っこい形をしていた。
私は操られるように、それを持ち帰り、すぐさま土に埋め、毎日水をあげ続けた。

そして今日でちょうど、それも二年になる。
その植物の成長はあまりにも遅く、ようやくつぼみが出来たところである。

川д川「早く大きくなってね」

この一言を言うだけで、私自身が全てから報われたような錯覚に陥る。
信用している物へかける言葉は、何より自分自身にかける言葉なのだと思う。

「」

母親が何か言っているようだが、どうせ大したことではないだろう。
まだ夕方だが、眠ることにした。お腹もすいていない。眠るのにはちょうど良い。
制服のままベッドに入り、私はすぐ眠りについた。




川д川「………ん?」

気付くと、私は広くてふかふかな土の上に立っていた。
ああ、夢か。気付くのにそう時間はかからなかったが、なんとも現実味のある夢だった。

「こっちにおいでよ」

声が聞こえた。振り返ると、巨大で真っ白な植物がそこにはあった。
あの鉢の中なのかな。そんなことを考えながら、言われるがままに足を進める。

振動。バランスを崩して地面に膝をついた。
上から何か落ちたようだ、植物の周りをぐるりと回ってみると、そこには大きな豆があった。

川д川「これ私の?」

返事はない。しかし聞く気もない。
私はその豆のもとに辿りつくと、美味しそうな豆を見て、無我夢中でかきむしり食べた。

川*д川「美味しい!」

植物が笑った。
私も笑った。

そのあと植物は色々なことを話してくれた。
そうやって話している間は生きている間で最も心が安らいだ。

植物は突然黙り込んだ。

川д川「どうしたの?」

「………………」

川д川「?」

「………渡したいものがあるんだ」

私の頭の上に何かが落ちてきた。
その正体は小さな黒い豆と白い豆。
黒い豆には目玉の絵が、白い豆には耳の絵が描かれていた。

「ねぇ、もうこんな世界うんざりでしょ?」

「ねぇ、願いを叶えてあげるよ」

「さぁ、起きて」

川д川「え」

視界が突然黒色に染まった。



川;д川「はっ!」

そこで夢から覚めた。
全身ぐっちょりと汗をかいている。
何だったんだろう。今のは。

川д川「でも………」

良い夢だった。
時計を見ると午前4時。夕方に寝たからなのか、あの夢のせいなのか。
分からないが、とにかく体は絶好調だった。

川д川「あ」

時計を見た時に視界に入った。
白い植物。なんとつぼみが割れて、中から何個かの豆が零れ落ちていた。

私は驚愕と感動を表して、その豆を鉢から両手で掬いあげた。
わぁ。と声を出し、その豆をまじまじと見つめた。
その時だった。その豆に描かれた目玉と耳の模様を見た時
私は何かに突き動かされるようにして、カバンを手にし、部屋を飛び出していた。

川д川「行かなきゃ」

思考は停止。
しかし分からないことはなかった。
この豆が何なのか、どういうものなのか。
疑問に思うことは一つとしてなかった。



( ゚∀゚)「かったりぃなー学校なんてよぉー」

从 ゚∀从「結局来てんじゃんw
誰かボコってうさ晴らしでもすれば?w」

( ゚∀゚)「うわwお前マジ悪党ww」

从*゚∀从「ギャハww」

川д川「………………」

从 ゚∀从「お、噂をすれば………」

ハインは毎日のように痛めつけている女を見つけ、それに近付く。
小柄なその女の顔に自分の顔をぐいっと近づけて、ニヤニヤと笑う。

从 ゚∀从「おいおいーw そんな強そうな目ェしてどうしたのー?」

川д川「………………」

从 ゚∀从「なんだよその目は………また蹴られたいのか? あん?」

ハインは女の髪を掴もうとする。
が、女は咄嗟にその手を払い、そこでニタリと気味の悪い笑みを浮かべた。

川∀川「ふふふ………」

そしてハイン達に背中を向け、廊下の角を曲がっていった。

从;゚∀从「………なんだよ、気持ち悪ぃな………」

( ゚∀゚)「ほっとけって、気狂ってんだろ」

从;゚∀从「ん、あぁ………」

ハイン達は教室に入り、登校の早い仲間と挨拶をした。

( ^ω^)「おいすだおーハイン、ジョルジュ」

( ゚∀゚)「おーっす」

真ん中一番後ろの席に座っているのがブーン。
そしてその机を激しく叩いているのが、デレだ。

ζ(゚ー゚*ζ「ちょっと、聞いてんのブーン? アタシ話してんだけど」

从 ゚∀从「はよーっ、相変わらず早ぇなお前らは」

( ^ω^)「フサとモララーは今日も遅刻かお」

( ゚∀゚)「遅刻しない方が珍しいっつーのw」

( ^ω^)「ハインは何だかんだで遅刻しないおね」

从 ゚∀从「オレは朝強ぇーからなw」

私、ハインリッヒ高岡はこんな風に悪ぶってみるのが夢だった。
こいつらは全員、万引きだとか援交だとか、非行を働いてる。
私は中学の時、そんなことなどしたことはなかった。
だが、やってみれば自分が何か特別な存在なような気がして、今日も、また楽しく生きられる。

やがて鐘が鳴り、前の方の席で真面目で地味な奴らが座った。
馬鹿な奴らだ、どうせこんな学校通ってんだから、いっそ悪くなっちまえばいいのに。

そんなことをずっと考えながら、今日も昼休みの時間が来た。
まぁ、授業中も大声で雑談してんだから、休みも何も関係ないが。

ミ,,゚Д゚彡「おっーす」

( ・∀・)「よ」

( ^ω^)「ようやく来たかお」

ζ(゚ー゚;ζ「ゲ、モララー」

( ・∀・)「よぉ援交女、昨日は何人とヤったんだ?」

ζ(゚ー゚;ζ「こいつガチでウザいんだけどー………」

从*゚∀从「ハハハ、面白ぇなお前ら」

購買行こうぜ、と声をかけて、一階へと向かった。
私達に弁当作ってくれる馬鹿親切な親なんていない。
購買に行かざるを得ないわけだ。

( ^ω^)「メロンパン一択だお」

( ゚∀゚)「俺はチョコにすっかな」

ζ(゚ー゚*ζ「ハインは何にする?」

从 ゚∀从「あーそうだなー」

興味をそそられるのがない。
仕方がないか、と他の奴らに馬鹿にされるのを承知で好きなパンを指さした。

ζ(゚ー゚;ζ「豆パン!?」

ミ,,^Д^彡「ガハハハハwwwオバさんじゃねーかwww」

从#゚∀从「うっせーな! 好きなんだからしょうがねぇだろ!!」

( ^ω^)「さすがハインだおw」

そのあと、教室に戻ってパンを食べながら雑談した。
いつもと同じで、気楽でいられる。

(;゚∀゚)「いてっ!」

ミ,,゚Д゚彡「どうした?」

(;゚∀゚)「なんかパンにかてーもん入ってたんだけど」

( ^ω^)「お。ジョルジュもかお。実はブーンもさっき」

(;゚∀゚)「ったく、なんだよ、ムカつくな」

( ・∀・)「問題だな。俺が学校に言っとくよ」

从 ゚∀从「………………」

午後の授業をサボって、学校をなんとなくジョルジュと歩くことにした。

( ゚∀゚)「そういえばあいつ朝から一回も見てねぇな」

从 ゚∀从「あいつ? あぁあいつね」

髪の長いあの女。
たしかに今日は異様な雰囲気だったが、特に気にすることもないだろう。どうせ、ビビって家に帰ったに決まっている。

(;゚∀゚)「つか、今日やけに蒸し暑いな、制服着てらんねー」

从 ゚∀从「あー確かに暑いな。もう秋のはずなのにな」

(;゚∀゚)「駄目だ、上脱ぐかな。何か汗ヤベーんだけど」

上着を脱いだジョルジュのワイシャツは
雨にあったかのようにぐっしょりと濡れていた

从;゚∀从「うわ、本当だ。何か悪いもんでも食ったんじゃねーのか?」

(;゚∀゚)「やっぱりさっきのチョコパンか、確かに変な味はしたけどさ………」

从 ゚∀从「………あれ? お前背中に入れ墨したのか?」

( ゚∀゚)「は? してねーよ」

从 ゚∀从「でも………なんか、模様見えるぞ…目………?」

(;゚∀゚)「こえーこと言うなよ、気のせいだろ」

从 ゚∀从「でも………」

私の言葉を遮るようにして、通りかかった男子トイレから怒鳴り声が響いた。

(#・∀・)「さっさと金出せって言ってんだろ!? あぁ!?」

(;><)「でも…駄目なんです………これは、お母さんが………」

(#・∀・)「てめーが働いて返せばいいだろ………オラ、よこせよ」

(;><)「うっ……うぅ……お母さん……ごめんなさいなんです……」

( ゚∀゚)「おー派手にやってんなー」

从 ゚∀从「だなwww」

ジョルジュも男子トイレに入って、たかられていた男の胸ぐらを掴む。
あーあ、可哀相に。真っ当な学校生活歩みたいなら、もっと良い高校入りゃ良かったのにな。

( ゚∀゚)「おい、ハイン。ちょっと長くなりそうだから、先行っててくれ、こいつと話つけなきゃなんねーからさ」

从 ゚∀从「あーはいはい。女子は教室戻ってますよ」

私自身。ストレス発散で誰かを傷つけることをしてはいるが
他人が暴力を振るうのを見るのは、心が痛む。
変な話だが、私みたいな中途半端な不良は、皆大体そんなものだ。

从 ゚∀从(イラつく奴をいたぶるから楽しいんだよな………)

楽しい毎日だが、薄っぺらい毎日だな。
このまま高校を卒業した私は、どんな人生を歩むのだろう。
ため息を一つついて、デレ達のいる教室へ戻った。

だから、その後に聞こえた悲鳴に私は気付くことが出来なかった。

後編
  1. 2008/12/25(木) 23:59:58|
  2. 短編
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